IMG_5100

生き生きとした好き嫌い。

小林秀雄「様々なる意匠」に、こういう記述がある。

===

「自分の嗜好に従って人を評するのは容易なことだ」と、人は言う。然し、尺度に従って人を評することも等しく苦もない業である。

常に生き生きとした嗜好を有し、常に溌剌たる尺度を持つということだけが容易ではないのである。

===

好きか嫌いか、それは、ものすごく大切な自分のものさしであるのだよと言ってくれていると思っている。それはぼくらの仕事においても結構大事なポイントである。好き嫌いの価値観が最初から大きくかけ離れた人と一緒に、なにか好きなものをつくろうとするのは、最初からまあ大変というかムリがある。

逆を言えば、その意味では、「あ、これ、好き!」というものをお客さんと一緒に見たりつくったりするということがぼくらの仕事なのだ。そこに尽きるのではないか、と思う。

IMG_1535

かしこくありたい。

人生ではじめて犬と暮らして三年が経つ。

散歩したり遊んだりしながら犬をじっと見ている。興味深いのは、直感的判断を瞬時に行なっているらしいこと。おいしそうなら駆け寄ってきてむしゃぶりつき、好きじゃないなら興味を示さない。捕まえようとすると警戒心を強めて逃げようとする。

おいしいこと、大事なこと、危険なことを一瞬で察し、それに直結した行動をとる。生き物としてはふつうかもしれないが、同居人(犬)がそれをするのを間近で見ると「かしこいな」と唸ってしまう。

そして「かしこい」ってこういうことだったのか、と気づく。時間をかけて複雑なパズルを解くでもなく、強靭な論理を構築するでもなく。鋭く知覚し、直感し、ほぼ同時に行動すること。本能的にほしいものを欲し、危険らしいことは回避すること。それが「かしこい」だった。

理屈であーだこーだ考えるより、直感的判断こそがずっと大事。本能的なものを研ぎ澄ませ、直感を即行動に移すこと。そういうかしこさ、今からでも手に入れることができるだろうか?