小林秀雄「様々なる意匠」に、こういう記述がある。
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「自分の嗜好に従って人を評するのは容易なことだ」と、人は言う。然し、尺度に従って人を評することも等しく苦もない業である。
常に生き生きとした嗜好を有し、常に溌剌たる尺度を持つということだけが容易ではないのである。
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好きか嫌いか、それは、ものすごく大切な自分のものさしであるのだよと言ってくれていると思っている。それはぼくらの仕事においても結構大事なポイントである。好き嫌いの価値観が最初から大きくかけ離れた人と一緒に、なにか好きなものをつくろうとするのは、最初からまあ大変というかムリがある。
逆を言えば、その意味では、「あ、これ、好き!」というものをお客さんと一緒に見たりつくったりするということがぼくらの仕事なのだ。そこに尽きるのではないか、と思う。